「家族八景」筒井康隆の世界
KOCEA代表兼デザイナーの金(きむ)です。
趣味の一つでもある読書。
小説、エッセイ、詩集、ビジネス本から新聞まで活字を体に入れるのが好き。
(勿論マンガも読む)
全く本を読まない時期もあるのですが、基本的には常に何冊か同時に読んでいる。
このウェブマガジンで、俺の独断と偏見に満ちた本の紹介や書評(の様なもの)を載せていく。
「書評」と言うと違和感があるので(俺は評価する立場にない)「感想」としておく。
今回は筒井康隆の「家族八景」。
目次
あらすじ
主人公、火田七瀬をめぐる8つの短編が連なって一つの物語になっている。
彼女は精神感応能力者(テレパス)で人の心を読む能力を持っている。
彼女は自分の正体がバレるのを恐れ、お手伝いとして働きながら家を点々とする生活を送っている。
それぞれの家庭で様々な問題があり、18歳の七瀬は大きく困惑し、時には戦い、強くなっていく。
超能力と聞くとただのSF小説のように思うかもしれないが、テレパスという能力を持った七瀬の視点によって小説の中に主観が複数生じている。
大抵の小説では、語り手や主人公がストーリーテラーとなり、その主人公の主観を通して見える世界を読み手は知る。
七瀬は人の心が読めるので、他人の感情や心の声を受けとってしまう。
七瀬が別のキャラクターと話している際、同時にそのキャラクターの心境も読者は知ることになるのだ。
もちろん他の小説と同様、語り手は七瀬の心境も表現する。
主観が複数生じるとはこういうことだ。
感想
この本に出会ったきっかけは、「七瀬ふたたび」という本をたまたま読んでいて「カナリオモシロイ!」と思い調べてみると、そこで初めてシリーズものだと知る。
「家族八景」、「七瀬ふたたび」、そして「エディプスの恋人」と続く。
早速本屋に行き、「家族八景ありますか?」と探しもせずに店員に聞く。
正直、読み始めてからハマるまでに少し時間がかかった。
なぜかというと「七瀬ふたたび」とは毛色が少し違うからだ。
読み続けると、あらすじでも書いたが主観が複数生じていることに気が付き(なぜか「七瀬ふたたび」では気にならなかった)そこからどんどんハマっていった。
ネタバレになるので詳しくは書かないが、最後の短編の「亡母渇仰」という話が面白かった。
単純に話としてもオモシロイのだが、たまたま同時期に読んでいた「鬱屈精神科医、占いにすがる」(春日武彦、太田出版、2015年)に同じような話が出てきていたから少しゾッとした。
「亡母渇仰」は息子と母親の歪な愛の形についての話だ。歪といっても、近親相姦という意味ではない。
息子は母親なしでは生きていけない。
彼は27歳で結婚もしているのだが、母親と同居しており精神的にも自立できていない。
その母親が亡くなるところから話は始まる。
母の死によって息子の精神状態はどうなるのか?
死別という強制的な母との別れは、いつか来る。その「いつか」が彼にとってはある意味、暴力的に訪れる。
息子の愛は母親に対する愛なのか、それとも自己愛からきているのか。
不謹慎かもしれないがとてもオモシロイ。
「鬱屈精神科医、占いにすがる」は春日武彦という精神科医が私小説的に書いている本だ。
彼もまた母親との確執というか、色々ある。
彼の精神状態もまた難解でいて、オモシロイ。
興味がある方はこちらも読んでみるといい。
誤解を恐れずに言うと、筒井康隆という人はとても性格が悪いと思う。悪いのではないかと推測する。
七瀬シリーズを読んだ人なら、なんとなくわかると思う。
当たり前だが俺は人の心が読めない。だから、みんなが何を考えているのかわからない。
七瀬シリーズは、「もし人の心がわかったら」という設定だ。
このシリーズを読んで、人ってこんな事を普段考えているんだなーとはならない。なりたくない。
潜在的にはこのように考えているのかもしれない、とは思う。
でもそれは心の一部であって、全てではないと思う。
まだ読んでいない方は、何をいっているんだ?だと思う。
読んでみてください。
「エディプスの恋人」はまだ読んでいないのでとても楽しみだ。
関連本
家族八景
筒井康隆 / 著
七瀬ふたたび
筒井康隆 / 著
エディプスの恋人
筒井康隆 / 著
鬱屈精神科医、占いにすがる
春日武彦 / 著
関連情報
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